VS引き角戦法 プロの実戦研究6「佐藤康九段対菅井六段戦/後編」

佐藤九段の引き角戦法対菅井六段の向かい飛車穴熊、今回は中盤戦に突入です。

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銀交換後、左金を繰り出して3七の角にプレッシャーを掛けにいった局面。

 

上図以下は▲1六歩▽3五歩に▲2六飛。

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▽3六歩から▽7三角をまともにくらっては劣勢になると見て、▲1六歩〜▲2六飛がしぶい手順。▽3六歩を受けるためとは言え、ここに2手掛けるのはなかなかですね。(単に▲2六飛だと▽1五角)

そして次の▽3二飛(下図)が疑問手だったようでここから混戦に。

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一見、普通の手に見えますが、ここからの先手の指し手はなるほどという手順でした。

上図以下▲4八角▽3六歩▲2四歩▽同歩に▲6六角!

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見事な角の転回ですね。今日の最初の図では素晴らしい押さえ込みの金に見えましたが、ここではまさにお荷物の金へと早変わりしているのが哀しいところ。

戻って▽3二飛では、▽5四歩▲4八角▽5五歩▲同歩▽7三角が正着。

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まあ▲4八角〜▲6六角の転回が見えていたら指すよねっていう順ですね。これなら金も使えるし、だいぶ違いますね。

さて、本譜に戻って▲6六角の局面。

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よく見ると▽3四飛には▲2三銀があり、相当に4四の金取りが受けにくいですね。ていうか受けがあるのかな?と思っていると、、

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▽3五銀!

これはなかなか指せない手ですねえ。まあ他に受け方が無かったとも言えますけど。

手厚い押さえ込みの一手ではありますが、いつでも▲4四角と切られる筋がありますし、どこかで▲3三歩の焦点の歩とかでやられそうな感じもしますしね。

しかしながら2四地点に2枚利いている(3五の銀と5一の角)のが大きく、居飛車も2筋突破が出来そうで出来ない感じです。

上図以下は▲2七飛▽6四歩に、、ズバッと▲4四角!

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早速の切り札発動で、ここから大混戦の中盤戦が始まります。

以下▽同銀に▲4三銀▽1二飛▲3二歩。

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色々と選択肢が多そうな局面から、しぶい手順が続きます。

さらに▽6五歩に、、3一歩成ではなく▲5二銀。

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▽7三角には▲2四飛があるため、意外と難解ですね。

以下▽3三角に▲4三銀成が痛いですが、切り返しは▽5四角。

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これが飛車銀両取りになって振り飛車良しになったかと思いきや以下▲4五桂の切り返しがあり、▽同銀▲3三成銀▽5六銀▲3七飛▽3六歩▲2七飛▽3三桂に▲2三角。

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今度は逆に飛車銀取りが掛かり、どっちが優勢なのか分かりにくい展開。

そしてここでべったり▽4七銀打!

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あぶらっこい張り付きも菅井六段の真骨頂。

あぶらっこいと言えば佐藤九段こそ真骨頂。というわけで▲5五金!

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この▲5五金はなかなかあぶらっこいですね。重要拠点となる5六の銀を狙いながら5四の角取りという一石二鳥の一手。

しかし以下落ち着いて▽2五桂に▲5四金▽同歩▲1二角成▽同香▲2一飛▽3七歩成▲4四角▽6二歩▲2九飛▽3八とに▲5三歩。

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ここで▲5三歩しかないようでは振り飛車優勢は間違いなさそうですが、この手は4手スキなのでその間に一気に先手玉を寄せ切ることが出来るのかどうか。

以下▽2九と▲5二歩成に、冷静に▽7二金打もありそうでしたが▽6七金!▲6二とで下図。

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ついにクライマックスの局面。後手玉は2手スキになっているので、詰めろが続けば良い局面ですが、なんと次の一手で佐藤九段は投了しました。

というわけで本日はここでクエスチョン!佐藤九段を投了に追い込んだ決め手は何だったでしょうか?

①▽7八金 ②▽7六桂 ③6八飛 ④▽7九角

 

 

 

 

 

はい、それでは正解です。

正解は、、

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③▽6八飛!でした。

▽7八金▲同金▽同飛成▲同玉▽6七銀打▲8八玉▽7九角▲9八玉▽8八金までの詰めろで、▲6八同金も▽同金が再び詰めろで手持ちが飛車一枚では受けが利かない格好です。

というわけで久々の対引き角戦法の棋譜紹介でした。

次回はあの永瀬六段が先月、約半年ぶりに振り飛車を採用、それもまさかの後手四間飛車穴熊を連投してしかも連勝!(順位戦の対吉田五段戦、棋王戦挑決トーナメントの対行方八段戦)という将棋を見ていきたいと思います。それではまた!


VS引き角戦法 プロの実戦研究6「佐藤康九段対菅井六段戦/後編」」への4件のフィードバック

  1. みな

    昨日の支部の例会では、引き角を使ってくる強敵を見事倒せました。
    このブログのおかげです^o^

    83手目以降の手順で38と、29飛が抜けていますでしょうか。
    あと、最後に筋違い角の棋譜紹介でした〜とあったので、あれ⁉︎そうやったっけ?と少し焦りました笑

    永瀬さんがそんなに振り穴を連投されたんですね。棋譜を予習しておきます!

    1. H-I 投稿作成者

      みなさんこんばんは!
      ご指摘ありがとうございます。修正しました。

      引き角戦法のライバルに勝てたそうでなによりです。
      そして菅井六段に続いて永瀬六段も後手四間飛車穴熊を採用し、しかもかなり勝率が高いので最近は楽しみが増えた感じです。
      永瀬六段は竜王戦も勝ち進んでいるので、決勝トーナメントの大一番での四間飛車穴熊採用の期待大ですね。

    1. H-I 投稿作成者

      水谷さん、棋譜情報ありがとうございます!
      行方永瀬戦は熱戦でしたね。しかし序盤の行方八段の指し方は、対四間飛車穴熊の決定版と言ってもいいのかなという感じがしました。結果は居飛車負けでしたけど。
      四間飛車穴熊側として▲3六歩と突かれたら▽4五歩としなければなさそうで、そうなると角交換が避けられなさそうで、さらにその後▽3三角と打たなければいけないのであれば作戦負けなのではないのかなと。
      まあ▲3六歩には▲3二飛という受け方もありそうなので、そのあたりは今後研究してみたいところですね。

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