VS引き角戦法 プロの実戦研究1

今日の将棋電王戦「豊島七段  VS YSS」は、今回初の人類完勝!

いやあ、本当に良かったです。序盤中盤を徹底的に研究、対策を施し、圧倒的にねじ伏せましたね。一見簡単に勝ったように見えますが、強気の指し手を早指しで連発するなど、研究と対策がバッチリで、これは相当に凄いことだと思います。

それにしても事前対局を1000局近く指したということで、さらに驚きですね。とにもかくにも良かったの一言に尽きます。88888888(パチパチ⇒ハチハチ⇒88、というニコニコ動画の拍手の擬音)

 

はい、、ということで今回からは引き角戦法のプロの実戦を研究していきたいと思います。とりあえず 将棋の棋譜でーたべーす さんで検索をかけたのですが、引き角戦法の序盤の形は多岐に渡るので(振り飛車の飛車の位置でも四間飛車だけでなく向かい飛車や中飛車、三間飛車もあるし、駒組みの種類も多い)なかなか大変でした。

まだ全ては調べ切れていないですが、直近だと女流棋戦が多そうです。多いと言っても年間数局レベルですけど、、。そこで飯島七段著の 新・飯島流引き角戦法 の巻末に掲載されている「引き角戦法のデータ」をチェック。

これがなかなか興味深いデータでした。まずは引き角戦法の主な採用棋士のデータ。(段位、戦績は共に2009年当時、分かりやすく千日手と持将棋は割愛)

飯島六段 16勝6敗
浦野七段 2勝3敗
三浦八段 1勝1敗
木村八段 2勝0敗
伊藤能五段 1勝1敗

主なといっても、ほとんど飯島さんですが、さすがの高勝率ですね。木村八段の2勝0敗も気になります。そして次に対引き角戦法、つまり引き角戦法を受けている側の主な棋士データ。

藤井九段 2勝3敗
櫛田六段 1勝4敗
佐藤和五段 2勝2敗
中村亮五段 4勝0敗
中田功七段 0勝3敗
横山五段 2勝0敗

そもそもこの戦法は、三浦九段が藤井九段に使ったのが始まりらしく、さすがミレニアムを開発した三浦九段といったところですね。両戦法共に▽5三角のポジションが似ています。

まずは藤井九段が5局も指しているので、その対策が気になりますね。そしてこの中でも特に、中村亮介五段の4勝0敗が光ってます。横山五段の2連勝もなかなか。

とりあえず最も気になる中村五段の4勝の将棋と、横山五段の棋譜をチェックしました。

 

中村亮介五段のデータ

1局目 2005年 対飯島七段:▲引き角戦法対▽四間飛車から中飛車へ
2局目 2006年 対飯島七段:▲引き角戦法対▽向かい飛車穴熊
3局目 2008年 対飯島七段:▲引き角戦法対▽向かい飛車穴熊
4局目 2009年 対糸谷六段:▽引き角戦法対▲向かい飛車穴熊

横山五段のデータ

1局目 2003年 対飯島七段:▽引き角戦法対▲向かい飛車+美濃囲い
2局面 2003年 対飯島七段:▽引き角戦法対▲四間飛車穴熊からの向かい飛車穴熊

 

まず中村五段ですが、この対中村五段戦を除けば引き角で16勝3敗の飯島七段に3連勝、さらに糸谷六段にも勝っていることを考えると、ポイントは向かい飛車穴熊ですかね。どれも最初から向かい飛車にしていました。

さらに横山五段も全て向かい飛車。しかも2局目は四間飛車穴熊のスタートであり、まさにこのブログのテーマにぴったりの展開で要チェックです。

ちなみに引き角戦法で有名な朝日OPでの藤井九段対羽生三冠の将棋も、藤井九段の向かい飛車穴熊での勝利でした。

 

というわけで、プロの実戦データから見る結論として最も有力なのは「向かい飛車にして仕掛けを封じ、穴熊にする」ですね。

さらに飯島さんの引き角戦法の棋書は2冊ありますが、一冊目の発売が2006年12月末、2冊目が2009年8月末。1冊目には対向かい飛車の記載があるものの後手番向かい飛車は無く、穴熊に対しても10ページのみ。前述の朝日OPの藤井羽生戦の解説が7ページありました。

そして2冊目は先手引き角戦法の中に向かい飛車+美濃囲いの記載が少しあるだけ。つまり、飯島さんが向かい飛車穴熊に対して解説しているのは2冊中、10ページの解説+朝日OPの解説7ページのみ。これはあやしいと言わざるを得ないでしょう。

そんなわけで次回はこの気になる向かい飛車穴熊の実戦の内容を見ていきます。ではでは!